杉と檜と、ときどきテクノロジー。36歳からの山林管理ノート

FOREST KNOW-HOW / 山の価値

曾祖父が託した山。今の価値、これからの価値。

家族が将来の暮らしを託した山は、今、どんな価値を持つのでしょう。土地、山に立つ木、伐採後の丸太では価格の意味が違います。公表資料の数字を読み、ご家族の山を受け継ぐ人にも役立つ判断材料をまとめます。

家族が山に託した、暮らしへの思い。

曾祖父は、子孫が生活に困らないように、資産として山を買い求めました。祖父も同じ思いで山林管理に取り組んできました。私は、茨城県北部のその山を受け継ぎました。木は杉と檜です。

この経緯は私自身の家族の話です。購入年や購入額は確認できません。これから見る全国の価格推移は、家族が売買した値段や、受け継いだ山の評価額を示すものではありません。

「山の値段」を、3つに分けて読む。

土地だけの価格
山林素地価格。ここでは杉・檜の山に対応する用材林地(針葉樹林地)を扱います。単位は円/10a。10aは1,000m²で、1haの10分の1です。
立っている木の価格
山元立木価格。利用できる丸太の材積を基準に、市場渡しの丸太価格から伐採・造材・運搬等の費用を差し引いた指標です。単位は円/m³。
丸太の価格
素材価格。下の統計は製材工場まで届いた中丸太の価格です。単位は円/m³。山の所有者にその全額が残るわけではありません。

出典:日本不動産研究所『山林素地及び山元立木価格調』2025年3月末現在 ↗
2025年10月30日公表。本文4〜6ページ、付表1・4を参照。

01 / FOREST LAND

土地の価格。全国と茨城でも、動きは違う。

用材林地の全国平均は、1983年の89,383円/10aに対し、2025年は40,533円/10a。同調査の最高値の45.3%の水準です。家族の購入時期は不明のため、この長期変化をそのまま家族の資産の値下がり率にはできません。

近年の年次推移:全国の用材林地・対前年変動率

各年3月末前年比
2020年−1.3%
2021年−0.7%
2022年0.0% ※
2023年−0.3%
2024年−0.5%
2025年−0.6%

※ 2022年は小数第1位への丸めにより0.0%。原資料の本文では小幅上昇と説明されています。丸め済みの変動率から過去年の価格を逆算してはいません。

2024年・2025年の価格:全国平均と茨城県平均

各年3月末全国(円/10a)茨城県(円/10a)
2024年40,75985,000
2025年40,53385,429

普通品等。全国平均は北海道・沖縄県を除く都府県平均。林地として利用する価格で、著しく高額な開発見込みの価格を除く調査です。茨城県平均も県北地域だけの相場や、所有林の査定額ではありません。

出典:日本不動産研究所『山林素地及び山元立木価格調』2025年3月末現在 ↗
2025年10月30日公表。本文4〜6ページ、付表1・4を参照。

02 / STANDING TREES & LOGS

杉と檜。立木の価格を、時間で見る。

全国の山元立木価格は、長期では大きく低下しています。近年は2022年に上昇した後、2025年にはスギが前年比2.4%下落、ヒノキが6.2%上昇。同じ山の木でも、樹種で動きが分かれています。

山に立っている木の価格は、どう変わった?全国平均・山元立木価格/各年3月末/主要年
スギヒノキ(破線)
1980年から2025年のスギとヒノキの山元立木価格スギは1980年22,707円から2025年4,026円、ヒノキは42,947円から9,494円。選択した年の値を結んだ折れ線で、全ての年を描いたものではありません。数値は直後の表でも読めます。010,00020,00030,00040,00050,000円/m³198019902000201020254,0269,494

名目価格。物価上昇を調整した実質価格ではありません。1980〜2010年は10年ごと、2020〜2025年は毎年を掲載。点の間の年は表示していません。

年スギ(円/m³)ヒノキ(円/m³)
198022,70742,947
199014,59533,607
20007,79419,297
20102,6548,128
20202,9006,358
20213,2007,137
20224,99410,840
20234,3618,865
20244,1278,940
20254,0269,494

出典:林野庁『令和7年度 森林・林業白書』林業生産の動向・資料2−3 ↗
2026年6月2日公表。日本不動産研究所の山元立木価格を収録。

伐採後の中丸太は、別の価格。

2021年の輸入材の不足・価格高騰では、国産材にも需要が移りました。ただし、工場着の丸太価格と、立木の価格では、流通段階も調査時点も異なります。

以下は暦年の年平均、径14〜22cm・長さ3.65〜4.0mの中丸太です。2025年に調査対象等が見直され、2024年以前と統計が連続していません。2024→2025年の差を、そのまま同じ条件の値上がり・値下がりと解釈しないでください。

年スギ(円/m³)ヒノキ(円/m³)
202012,70017,200
202116,10025,900
202217,60025,100
202315,80022,000
202415,90022,300
202515,40025,300

出典:林野庁『令和7年度 森林・林業白書』木材価格の動向・資料3−8 ↗
2026年6月2日公表。農林水産省『木材需給報告書』を収録。

03 / WHAT MOVES OUR FOREST?

世界の動きは、山の収支にどう届く?

以下は、確認できた出来事と、そこから考えられる影響を組み合わせた見通しです。為替・関税・輸送費などが日本の土地価格に及ぼす影響の大きさは、確認できません。

国内需要 / 2025年実績

住宅は減る。新しい木造建築には余地がある。

2025年の新設住宅着工は約74万戸、前年比6.5%減。白書は、住宅需要の長期的な減少の可能性を踏まえ、非住宅・中高層建築での木材利用拡大を課題に挙げています。

見通し:従来の住宅向け需要だけに成長を見込むのは慎重に。新用途が増えても、自分の木が求められる寸法・品質・供給条件に合うかは別に確かめる必要があります。

出典:林野庁『令和7年度 森林・林業白書』建築分野における木材利用 ↗
2026年6月2日公表。2025年の住宅着工・木材利用。

輸出・中国 / 2025年実績

海外需要は伸びても、売り先の偏りがある。

日本の木材輸出額は2025年に596億円、前年比10.8%増。輸出される丸太の約9割は中国向けです。

見通し:海外市場は機会になりますが、中国の需要や為替の変化に影響を受けやすい構造です。全国の輸出増だけで、茨城の所有林の売却額が上がるとは判断できません。

出典:林野庁『令和7年度 森林・林業白書』木材輸出の取組 ↗
2026年6月2日公表。2025年の木材輸出実績。

米国の通商政策 / 2026年7月24日時点

関税が、木材の流れと採算を変える。

林野庁の資料では、日本から米国へ輸出する主な針葉樹の丸太・製材などには10%の分野別関税、それ以外の対象木材には原則12.5%の関税が整理されています。対象品目ごとの扱いが異なります。

見通し:輸出先の採算や流通先の変更を通じて日本の需要にも影響し得ます。輸入材の価格上昇、需要の減少、他市場への供給移転のいずれも考えられ、国産材への効果は一方向には決まりません。

出典:林野庁『米国の関税政策(木材関連)』 ↗
2026年7月24日時点。品目別に異なる関税措置を整理。

国際供給・物流 / 2026年9月13日確認

海外の供給制約は、機会と費用の両方に働く。

林野庁は、2022年のロシアによる一部木材の輸出禁止や、日本の対ロシア制裁に関する情報を整理しています。また、2021年には海上輸送の混乱等が国内の輸入材不足につながりました。

見通し:輸入材の調達が難しくなれば国産材が選ばれる可能性があります。一方、燃料や運搬の負担が増えれば手残りは減ります。売値と費用を同時に確かめる必要があります。

出典:林野庁『木材輸入に関する情報』 ↗
2026年9月13日確認。ロシア関連の貿易措置、輸入実績、各国情報への案内。

出典:林野庁『令和7年度 森林・林業白書』木材価格の動向・資料3−8 ↗
2026年6月2日公表。農林水産省『木材需給報告書』を収録。

森林の炭素吸収 / 2026年9月13日確認

環境価値を収入につなぐには、手続きがある。

森林分野のJ−クレジットは、森林管理等による吸収量を認証し、企業等へ販売できる制度です。例えば森林経営活動の方法論では、認定された森林経営計画に沿った施業が対象となります。

見通し:管理を支える収入の候補ですが、山を持っているだけで収益が発生する仕組みではありません。対象条件、記録・審査の負担、売り先を確認してから収支に組み込みます。所有林での適用可否や金額は確認できません。

出典:林野庁『J−クレジット制度』 ↗
2026年9月13日確認。登録・認証・販売の手順と森林分野の方法論。

これからの見通しは、条件を置いて考える。

次の3つは、公開資料を基にした本記事のシナリオです。発生確率や価格の数値予測ではありません。

需要が広がる場合

売り先が増え、費用を上回る価格が得られる。

国産材への転換や建築用途の拡大が進み、求められる材を継続して搬出できる山は、収益改善の可能性があります。

計画の基本に置く場合

価格の上昇を当てにせず、現地の条件で収支を組む。

販売先、材の品質、道の状態、搬出距離による違いを見積もりに反映。全国相場を見ながらも、自分の山の数字を集めます。

需要減・費用増の場合

売上があっても、管理に回せるお金が減る。

住宅・輸出需要が弱く、伐採・運搬・再造林の費用がかさむと、手残りが小さくなる可能性があります。作業範囲や時期、共同での管理も相談の対象です。

出典:林野庁『令和7年度 森林・林業白書』林業経営の効率化に向けた取組 ↗
2026年6月2日公表。伐出・運材、再造林の収支構造。

受け継いだ山で、次に確かめること。

所有林の面積、樹齢、材積、境界、搬出条件、管理費は、この記事では確認できません。全国や県の平均を掛け合わせて査定する段階ではなく、現地の情報を集める段階です。

  • 境界資料と地番、過去の植林・間伐の記録をまとめる。
  • 森林組合などに、杉・檜の量と品質、搬出方法を見てもらう。
  • 立木売却か丸太販売かをそろえて、見積もりを比較する。
  • 再造林・保育の費用と自分の作業時間も記録する。

立木の見積額は、すでに伐採・搬出等の費用を考慮している場合があります。丸太販売の見積額と混ぜず、同じ費用を二度差し引かないよう、負担する範囲を確かめます。

木材販売で確認する項目を読む

MY STARTING POINT

私の持論・今の出発点

山林管理を、自分の成長に。
学びと道具づくりを、副収入にも。

私は山のド素人です。これから植林、下刈り、間伐、木材販売に取り組み、その知識や経験をまとめていきたいと考えています。やましるべの開発や紹介・販売も、その取り組みの一つです。

年配の人にも使いやすく、市販のスマホで境界の目印を記録できること。自分の山に必要な道具をつくりながら、同じように管理に向き合う人へ経験を届けていきます。

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